当時は23歳
漠然とロマンポルノと呼ばれるものに興味を持っていた。
映画のようにあって、ストーリー中に行われるセックスに対して芸術とエロスが交差する世界観を覗いてみたかった。エロを映画内に落とし込む芸術。性と生みたいなテーマに興味津々だった。
今もアホだが、若い頃は凄まじいアホだったので、友人Mくんとクリスマスイブにロマンポルノを見に行こう!と約束をした。
ロマンポルノについて調べていくと、新世界国際劇場という場所でロマンポルノが見られることが解った。
しかもこの新世界国際劇場はオールナイトで映画が放映している。
おいおいおい。こりゃ深夜帯にドキドキしにいくしかねーな。
その場所がハッテン場だとは知るよしもなく純粋にエロい映画見たさに新世界国際劇場へ向かった。
いざ新世界国際劇場へ
友人Mくんと2人でワクワクしながら新世界国際劇場前に到着。
そして上映スケジュールを見ていると1Fの普通映画に「アート・オブ・ウォーⅡ」というタイトルに目が向いた。
Mくんは芸大に通っていたりしたし、僕はMくんと一緒に芸術活動チームを組んでイベントをやったりしてたのもあって、アートという言葉に雷に打たれたかのような衝撃が走った。
僕・M「芸術で戦争が起こるなんて、、、きっと面白い映画に違いない!」
単細胞でアホな僕ら2人はロマンポルノを見るために映画館に来たのに「芸術活動に繋がる」という理由でアートオブウォーⅡを見ることにした。
肝心の映画まで余裕の時間あり
新世界国際劇場の受付で1Fと地下を行き来できるチケットか、1Fだけか選べたのだけど、2人はアート・オブ・ウォーに夢中。もはやロマンポルノが見たいなんて気持ちは1mmもなく、1Fだけのチケットを購入した。
新世界国際劇場は一度チケットを購入すれば、朝まで流れている映画が見れるコスパ最高の映画館。
さすが西成だぜ!すげぇ!
そんなこんなでMくんと一緒に映画館に入るとお客さんはまばらにいた。
映画館で一番いい真ん中の席が空いていたので「真ん中でみようぜー」と着席。
新世界国際劇場では常にオムニバス形式で映画が流れている。
アート・オブ・ウォーの上映は次の枠で、僕らは着いた頃は名前も知らないラブコメ映画の途中だった。
途中からみているから話の本筋がわからず、僕らは喫煙所に向かうために立ち上がった。
僕らが立ち上がると同時に映画館で数人の男性が立ち上がった。
新世界国際劇場でRPGのパーティが誕生
扉を出て階段へ向かうと階段の下の椅子で女性2人が楽しそうに談笑をしている。
女性たち2人を横切って僕らは2階の喫煙所へ向かうため階段を登っていった。
2階についてタバコに火をつけようとしたら、階段から複数人の足音が聞こえてきた。
下を除くとまるでドラクエのパーティみたいに一列になって階段を上がっているのが見えた。
そして一番前のスーツ姿の男性は丁度上を見ていたため僕と目が合った。
「みんなタバコ吸いにきたなー。気まずいわー」
気まずいし、トイレいこう。
そんな感じで2人でトイレに入って用を足していると、中年男性が4人共トイレに入ってきた。
男性たちはトイレに向かわず後ろから僕等を無言でガン見している。
おかしい。。。なにか異様な空気を感じながらトイレを出て喫煙所でタバコを一服。
僕らの後から中年男性たちがゾロゾロとトイレから出てきた。
そしてまた僕らをガン見。
グレーのスーツを着たメガネの男性が一人がこちらに来てタバコに火をつけ、タバコを吸いながらジーッと僕らの顔を無言で見てくる。
僕「なんだこのひと…目玉がビー玉みたいだな…」
タバコの煙が立ち込める中で会話するわけでもなく、終始無言だった。
僕らを見ている男性はタバコを吸い終わる前に火を消して、1階に降りていった。
…なんか今の人たち怖かったなぁ。宇宙人みたい
あの人たちゲイやからなぁ。俺らを品定めしてたんちゃう?
!?なんだと!?
恥ずかしながら僕は、新世界国際劇場がハッテン場ということを一切知らずにこの場所に来ていたのだ。
Mくん!はよ言ってよ!
「ゲイ!?えっじゃあ、僕らもゲイとして見られてるってこと!?」
「せやで」
ハッテン場と知った途端 映画館はお化け屋敷へと変化した
ハッテン場とは知らず新世界国際劇場に来てしまった。
「やらないか?」みたいな世界がこんな大衆的な映画館で行われてるなんて衝撃的過ぎる。
映画を見に来たのにお化け屋敷に入ってきてしまったような奇妙な感覚。
生憎だが襲われる怖さは求めていない。
1階に戻って着席すると先程までとは打って変わってバイオハザード1の洋館みたいに見えてきた。
ハッテン場でカップル成立を目撃
友人は元々ハッテン場という場所を知っていたからか、平然としていたがその事実をさっき知った僕は恐怖に襲われていた。
ちなみに僕はブスだし、痩せ型でゲイ受けしそうなタイプではない。
が、ヒョロガリが好きなゲイがいるかもしれない。
むしろ若けりゃなんでも良いっていう人もいるかもしれない。なんせ僕らは二人共20代前半だし若かった。
よくよく観察して見たらウロウロ歩いている男性たちは映画は見ずに男しか見ていない。怖い。
Mくんなんかはキレイな顔だったから周りの人達にはソシャゲのウルトラレアみたいな感じで見られてたと思う。
何も行動を起こさなければ何も起こらないのだけど、僕は必要以上に恐れていた。
なるべくゲイの方たちがこちらにアピールしにこないように、タバコを吸いながら映画を見るDQN客を演じていた。
僕らがタバコ吸っていると最前列の男性もタバコを吸っていた。
僕ら以外にもマナーの悪い客がいるんだなー。
そんなことを考えながら映画を見ていると、タバコを吸っている男性に初老のおじいさんが近づいていくのが見えた。
その2人は何やら会話をしたあと、ゆっくり艶かしく絡み合いだした。
ハッテン場の最前列で絡み合うふたり
映画館の最前列では男性2人が絡み合いながら蠢いていた。
グネグネとおぞましく絡み合いながら動く男性2人の姿に僕はもののけ姫に出てきたタタリ神を思い出していた。
タタリ神は暫く蠢いたあと、場所を気にしてなのか映画館を出ていった。
なんだか。凄い瞬間に立ち会ってしまった。
まさかタバコを吸っているDQN客でも声をかける人がいるなんて……………
…
……
あれ…?
Mくん…もしかしてさ…タバコ吸ってるのって声かけられるん待ってます。っていうサインじゃないよな?
っ!?…………消しとこう
サインかどうかわからないし多分違うと思うけど、僕ら2人は男性2人が絡み合うおぞましい姿を生で見てしまいビビリ倒していた。
そこから先は僕ら2人は子羊のように怯えながらラブコメ映画を見ていた。
周りがの環境が地獄だったからかストーリーの中盤からなのにすごく面白かった。
ラブコメ映画って凄いですね。
なんにも悲しいことがないし、こうなったら良いのに~!っていう王道的なストーリーがどんどん進んでいく!
人生に絶望したり、悲しくてツラい時はラブコメ映画を見よう!
そうこうしているうちにエンディングロールが流れて、お待ちかねのアート・オブ・ウォーだ!
早く僕らに芸術的なエネルギーを降り注いでくれ!こちとらアートに命かけてんだ!
アート・オブ・ウォーはビビるほどつまらなかった
僕らはこの日一番の楽しみでアートオブウォーを見始めたのだけど…
映画は引くぐらい全然おもしろくなかった。
Ⅱから見たからなのかそれともこのシリーズ自体がダメなのか…よくわからないけどこの映画を見る位なら公園で木を見てる方がよっぽど有意義な時間を過ごせるなって感じた。
映画マニアのMくんはオープニングの時点で「あっ…この映画だめっぽい」と察していたらしい。さすが芸大生のMくん。感性が研ぎ澄まされている。
新世界国際劇場の1階はまだセーフ。地下は魔境…
期待して見に行ったアートオブウォーがうんちだったのと、これ以上映画館に滞在して新たなタタリ神を目撃したくないっていう気持ちがあったので2人で映画館を後にする。
ふと…思い出す。
そもそもアート・オブ・ウォーがやってなかったら僕らはきっと地下に行ったでだろう。
地上でもDOPEな世界だったのに地下は……。
それから程なくして、地下潜入レポートをインターネットで見ていると…
要約するとタタリ神だらけで、そのタタリ神たちは合体し合ったりしているらしい。
思い返すとブルッときた。ありがとうアート・オブ・ウォー。
クソ映画に感謝するなんて思いもしなかったよ…。
余談ですが、1Fの階段近くにいた談笑しながら座っていた女性2人。
この方たちは、ハッテン場で素敵な殿方と発展出来なかった人がお金を払って買っていかれるそうです。
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